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先月、恩師であるモナッシュ大学Dat Bao教授が2年振りに来日。
中央大学付属高等学校でのセミナー「"沈黙"という学習態度に価値を見出すために」に、
通訳として参加させていただきました。
アジアの生徒に見られがちな授業中の「沈黙・無言」の学習態度を文化的側面から分析し、
著書 "Understanding silence and reticence" (2014)の内容にご自身の経験を織り交ぜて、
より楽しく分かりやすい内容でした。
セミナーで教授が触れていたことでもありますが、
私たち日本人が「授業中の無言についてどう思うか?」
「授業中に意見や疑問を述べることなく黙って聞いている授業態度をどう思うか?」と聞かれたとしても、
おそらくそれに対して特別意見がある人は多くないと思います。
なぜならば、それは私たちの文化では当然の学習スタイルだからです。
ですが、欧米文化では自分の意見を述べる、発言することに価値が置かれ、
授業中は多くのデスカッションがなされ、生徒が自身の意見を述べ、
先生の意見に対しても疑問を投げかけるのが普通です。
よって、オーストラリアや欧米などの学校では、アジア人学生の「沈黙・無言」の学習スタイルは、
「自分自身の意見がない」「学習することに消極的」「授業を進めにくい」
などとネガティブにとらえられがちです。
Dat Bao 教授の著書ではオーストラリアの学校で学習する、
英語を第二言語とする日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピン人生徒が、
自分たちの「沈黙・無言」の学習スタイルを、欧米式の学習スタイルと比べてどう感じているかについて分析しており、
その内容だけでも非常に興味深い内容となっていますが、
私が感じた最も大切なメッセージは「異なる文化の学習スタイルを、
教える側の人間(教師)が理解し、自己の指導法を柔軟に変えていくこと」であるということです。
この本で述べられているのは、オーストラリアの学校でのアジア人学生の「沈黙・無口」という学習スタイルについてですが、
これは同時に、昨今文部科学省より求められている
「主体的・対話的で深いなまび」(Active Learning)という授業改革にも大きなヒントとなると感じます。
※「主体的・対話的で深いなまび」(Active Learning):
従来の知識を伝達するという学習スタイルから、教師と生徒が意思疎通を図りながら、
生徒が主体的に問題を発見し解決策を見出す能動的学修。
アジア人の受動的な学習スタイルは儒教文化の影響ともいわれています。
しかし、Dat Bao教授の研究で多くアジア人学生が回答した授業中の「沈黙・無口」の理由は
もっと身近ことにありました (クラスメートとの人間関係、体裁、クラスの雰囲気、教師の反応など)。
これらの理由を理解し、生徒がより主体的に学習することができる授業を作るのは、
教える側である私たちの責任であると感じます。
"Understanding silence and reticence" は2回読み込み教授のセミナーの通訳に臨みましたが、
全く納得いく通訳ができず意気消沈で帰路に付き、
自分の勉強不足を痛感した痛い経験にもなってしまいました・・・。(>_<)